精神分裂病の女優Hは、なぜどうしてAVの世界に
精神疾患を患った女性は、今のAV業界にはほとんどいません。
AV女優の数が非常に多くなったため、ルックスやスタイルといった外見上の要素だけではなく、規律を守れるといった内面的な要素もAV女優に必須の特質とされるようになりました。
そのため、思考回路や精神状態が一般的ではないために規律を守ることが難しい精神病患者はAV女優に不適合になってしまったのです。
とはいえ、一昔前のAV業界にはそのような女性は多かったものです。
AV女優と精神疾患
AV女優は、世間からは暗いイメージを持たれています。
今では業界がクリーンになったことで、そのイメージ通りのAV女優は非常に少なくなったものの、クリーン化の途上であった2000年代初めにはまだまだ世間のイメージ通りのAV女優は多かったものです。
そのイメージというのは、虐待などの不幸な幼少時代を過ごした女性、親の借金を負わされた女性、精神疾患を患った女性などです。
ここで紹介するHは、精神分裂病を患った女性です。
精神分裂病とは、簡単に言えば何らかの理由から精神が分裂することによって、本来ひとつであるはずの人格が複数になる精神疾患のことです。
以前、ビリー・ミリガンなる24個の人格を持つ犯罪者を取り上げた『24人のビリー・ミリガン』がベストセラーとなったことで、精神分裂病は広く知られるようになりました。
Hの生い立ち
Hは、非常に厳しい家庭に生まれました。
母親はとにかくスパルタ教育で彼女に接しました。
彼女が覚えている最も古い記憶によれば、保育園に靴を忘れて帰ったところ母親が激怒し、家に入れてもらえなかったそうです。
テストで90点を取れば普通の親はほめるところですが、彼女の母親はなぜ10点間違えたかを厳しくとがめたといいますし、ピアノで指使いを間違えればスリッパで思い切り頬を叩かれたそうです。
そのような環境下で、彼女は母親におびえながら、怒られないように用心深く過ごしました。
母親に対して自分の意見を押し通したことなど一度もなく、自分の気持ちは押し殺しました。
もっとも、そのような厳しい母親でも、やはり母親だから好きだと語っていますから、厳しさの中に愛情はあったのかもしれません。
好きな母親に褒めてもらいたい気持ちはあったため、勉強もピアノレッスンも一生懸命に頑張り、成績もそれなりに良い成績をキープして成長していきました(それでほめられたことは一度もありません)。
彼女の精神が分裂したのはいつ頃のことなのか、詳しい所は分かりません。
幼少時代に母親からあまりにも厳しくしつけられたからかもしれませんし、その後の激しいいじめが原因になっているかもしれません。
また、後述しますが、極端なダイエットが精神に及ぼした影響も大きいことでしょう。
それなりの成績をキープし続けた彼女は、地元の優秀な女子高に進学しました。
難関大学への進学率も高く、地元では有名な高校でした。
国公立理系コースに所属し、目指す大学のレベルが高いだけにクラスはいつもピリピリしたムードだったといいます。
そのような高校で、彼女は激しいイジメに遭う事となります。
イジメのきっかけは、親の競争からでした。
彼女の近所にも同い年の女の子がおり、小学校から高校まで一緒だったのですが、両方の家の母親が教育ママであり、わが娘の方が優れているといつも争っていたそうです。
そのような親の影響によって、いつしか子どもも対抗心を抱くようになりました。
高校でも同じクラスになったのですが、当時の彼女は体重90kgという巨漢であったため、その子が中心となってイジメが始まりました。
デブであったため、制服が特注であったこと、体操着のブルマが入らなかったこと、親が過保護であることなど、イジメの材料には事欠きませんでした。
また、国立大学を目指すピリピリムードのクラスであったため、クラスメイトのストレス発散の道具になってしまったのです。
朝、学校に行くとイスと机がない、日直と掃除当番はいつも彼女がさせられる、画鋲で刺されるなどといったイジメは序の口で、いつしか人間ダーツが始まりました。
巨漢の彼女の背中はダーツの的となり、休み時間になるとクラスメイトからコンパスを刺されたのです。
そのような苛烈なイジメを受けた彼女は、死にたいと思うようになりました。
いつラクになるのかというギリギリの感情の中で何とか耐えていましたが、いつ死んでもおかしくない状況でした。
死に方も真剣に考えており、泥酔して雪山で凍死しようとか、飛び降りようとか、色々と考えたそうです。
クラスメイトから殺されると思い、怖くて学校に行きたくないと思いましたが、スパルタの母親が不登校を許すとは思えなかったため、無理をして学校に通っていました。
しかし、彼女の様子から異変に気付いた母親は学校に行かなくていいと良い、Hは高校1年生の3学期に退学しました。
精神分裂の自覚
高校を中退すれば学歴は中卒になってしまうため、彼女は大検の予備校に通って勉強を続けました。
イジメられることはなくなりましたが、イジメの原因にもなった90kgのデブであることのコンプレックスはすさまじい物がありました。
被害妄想は募っていき、買い物に行っても「店員さんがウザがってるんじゃないかな」、電車で誰かが咳払いをすれば「私、悪いことしたかな」などと考えるようになったのです。
周りの人が全て敵に見え、孤独感にさいなまれました。
その劣等感を払拭するため、彼女は強迫観念的なダイエットをすることになります。
高校を中退した時、つまり彼女が16歳の時から強烈なダイエットを始めました。
水以外なにも口にせず、朝晩10km走りました。
お腹がすくとオナニーをして寝て空腹を忘れました。
何も食べずに走って、勉強して、寝てを繰り返した結果、1ヶ月(1ヶ月何も食べなかったそうです)が経過した時に倒れて救急車で運ばれました。
その時、すでに50㎏を切っていたそうですから、1ヶ月で40~50㎏痩せたことになります。
そのような病的なダイエットをしたことは、身体的のみならず、精神的にも大きな負担をかけることになりました。
拒食症と過食症が繰り返され、躁鬱もあり、自傷もするようになりました。
入院した際に血糖値と電解質を調べて異常を察した医者が食事を摂らせたところ、たがが外れたように過食になるのでした。
卵を何十個も一気に飲んだり、冷凍食品を解凍しないまま食べたり、寝ていたはずが無意識のうちに台所で手あたり次第に食べたり。
そうなるとまた太るかもしれないと恐怖を覚え、次は拒食になるというパターンです。
食べ過ぎたときは鬱状態で自分を罰するためにリストカットをするようになり、拒食を数日間終えると気分爽快で躁状態になるのです。
そんな彼女は、精神分裂がすでに始まっていました。
医者によると、彼女には7つの人格があると診断されています。
彼女が自覚しているのは3つの人格であり、真面目な彼女、淫乱な彼女、暴力的な彼女です。
暴力的な彼女の自覚は暴行未遂でした。
普通はおとなしく真面目な彼女なのですが、ある時電車の中で酔っぱらったオバサンに暴行寸前になったところをサラリーマンに止められ、自分の異常行動に気づいたそうです。
完全に無意識にそのような人格が現れることがあるのだといいます。
淫乱な彼女というのは、セックス依存症の彼女です。
AV女優までの道のり
彼女の初体験は、まだ彼女がデブだった15歳の時であり、家庭教師の先生と済ませたそうです。
ダイエットの後は、淫乱な人格が芽生えたことで、手あたり次第に男性と交わるようになりました。
とはいっても、対象となる男性は30代以上のおじさんばかりです。
なぜ若い男性が駄目なのかと言えば、デブだった頃にある若い男性から罵声を浴びせられたこと(赤いコートを着ていた彼女に向って「郵便ポストみたいだ!」といって笑ったこと)がトラウマになって、若い男性には恐怖心があるのです。
しかし、30代以降の男性ならば相手を選ばずにセックスをしました。
極端な行動ですが、彼女はその場だけの疑似恋愛であったとしても、夢中になれるからだといいます。
相手は出会い系で出会った結婚している人ばかりですが、それでも関係ありません。
出会い系では一日に3人と会うこともあったため、
何百人という男性と交わっています。
出会い系では援助交際ではなくセフレとして出会っていたため、お金が介在するセックスではありませんでした。
その後、彼女はイメクラで働くようになりました。
イメクラではお店に内緒で本番ばかりしていたため、彼女の経験人数は600人や700人は優に超えていると思われます。
これが、セックス依存症の淫乱な人格です。
しかし、セックス好きならば出会い系でも十分だったところを、なぜイメクラで働くようになったのでしょうか。
それは理由があります。
上述の通り、彼女が初めてセックスを経験したのは中学三年生の時であり、相手は家庭教師でした。
家庭教師とのセックスは主にラブホテルで行われましたが、その家庭教師が変態であり、よくAVを見せられたそうです。
そのとき、よく有名AV男優の加藤鷹の姿を見たのですが、かっこよくてテクニックがあった加藤鷹のことが彼女の頭から離れなくなりました。
やがて、激しいイジメとダイエットの後に淫乱な人格が芽生えた彼女は、出会い系でセックスをしまくるうちに、加藤鷹とどうしてもセックスをしたいと思うようになりました。
そして「AV女優になろう」と決心し、その練習としてイメクラで働いたのです。
その後、彼女は企画女優ではあるものの、本当にAV女優になりました。
AV女優になって半年が経過した時、彼女はついに加藤鷹とセックスを経験しました。
しかし、その翌日、彼女は放心状態になってしまいました。
ずっとあこがれ続けていた加藤鷹にセックスをしたことで何年間も追い続けてきた目標を達成してしまい、全て終わったように感じてしまったのです。
生きていく希望も無くなり、ただただ呆然としました。
しかし、インターネット上で相談するなどして、再び歩み出すこととなりました。
次の目標は大学進学と、イジメへの復讐として自分の経験をもとにした小説を書くことと、司法試験に合格して弁護士になることです。
加藤鷹に出会って目標を達成しましたが、彼女はまだAV女優を続けました。
理由は単純で、やりがいがあるからです。
彼女はAVについて以下のように語っています。
一昔前はこのような特殊な人が入り込む世界がAVでしたが、今はそのような事はほとんどなく、ごく普通な女性が活躍する世界になっています。
AVの目的は加藤鷹さんだけじゃなかったかもしれませんね。その後も続けましたから。
デブだったことでイジメにも遭って、女性としても人間としても認めてもらえなかった時間が長かったことが理由です。
AVに出演すれば、それを見て一人エッチをする人がいますけど、それは私のことを女として認めてくれているという事です。
AV女優は女としてそこに存在しているわけですから。
そんなふうに認められるから、女性として扱ってくれるからこそAVで頑張ってしまうんです。
それが一番の理由かもしれません。
デブだった時代に認められなかった私でもここまでやれるんだっていう証明でもあるわけです。
以前、出会い系で何人もの男性とセックスしまくったのも同じ理由かもしれません。
AVに出たかった本当に理由、一番根底にあった理由は加藤鷹さんじゃなくて、多分それなんだと今では思います。