現代のAV女優はプロフェッショナルばかり
AV女優と聞くと、ただ裸になって、ただセックスをしてお金を稼いでいると思われることが未だに多いものです。
しかし実際には、AV業界はそのように甘いものではありません。
AV女優の数が非常に多くなった今では、プロ意識のないAV女優はとても生き残れない環境になってきているのです。
本稿では、AV業界が厳しくなってきている背景や、AV女優のプロ意識について解説していきます。
現代のAV女優は数千人
AVを見てみると、AV業界の内側まで考える機会は中々ないものです。
例えば、芸能人が芸能プロダクションに所属するのと同じように、実はAV女優もAVプロダクションに所属しているというのも、一般にはあまり知られていないことでしょう。
芸能人は、吉本興業とか、松竹芸能とか、ワタナベエンターテイメントとか、太田プロダクションとかいったプロダクションに所属し、マネージャーの営業によってテレビ局やインターネット製作会社、イベント会社など、様々な媒体から仕事の依頼を受けることによって仕事をしています。
AV女優もこれと同じです。
東京都内だけでも100社以上のAVプロダクションがありますが、AV女優たちはそれらのプロダクションに所属し、様々なAV製作メーカー、出版社などから依頼を受けて仕事をしているのです。
AVメーカーにはキャスティング担当者がおり、AVプロダクションが売り込んでくるAV女優の窓口となって、製作予定のAVとそれに出演するAV女優の調整を行なっています。
AVプロダクションは、自社に所属しているAV女優の宣材(AV女優の写真、スリーサイズ、年齢などのプロフィール)を入れたファイルをメーカーに持ち込み、AVに出演させてほしいとプロモーションするわけです。
このとき使われる宣材には、ヌード写真も添付されており、スタイルは一目瞭然になっています。
プロダクションが売れると見込んでいるAV女優の場合には、メーカーに本人を連れて営業に出向き、その場で面接を受けることもあります。
したがって、メーカーのキャスティング担当者は、毎日多くのAV女優を見ているわけで、AV業界にはどのようなAV女優がいるのか、新人で有望なAV女優にはどのようなのがいるか、そういったことにかなり精通しているものです。
しかしながら、1年間でいったいどれくらいのAV女優がデビューしているのかということに関しては、キャスティング担当者も良くわからないというのが本当のところです。
なぜ、「わからない」のでしょうか。
その理由はシンプルで、「あまりにもデビューする人数が多すぎるから」です。
特定のAV女優の作品だけを見ている人や、メーカーイチオシの作品ばかり見ている人からすれば、毎年デビューするAV女優は数十人くらいのものだろう、実際活動しているAV女優なんて100人かそこらだろうと思っているのではないでしょうか。
AV業界について深く知る前の私もそうでした。
しかし、現代のAV業界で活動するAV女優は、とても数十人、数百人というレベルではありません。
これは、実際にAV女優の人数を試算してみるとよくわかります。
現在、全国に存在するAVプロダクションは150くらいであるとされています。
大手になると100人以上のAV女優が所属しており、小規模なプロダクションになると10人程度のプロダクションもあります。
中堅プロダクションになると50人といったところでしょうか。
そこで、仮に(実態が不明瞭である以上、正確な計算ではありませんが)各プロダクションに平均して50人のAV女優が所属していると仮定すると、7500人ものAV女優が存在することになります。
いくらか誤差があるにしても、バリバリ活躍するAV女優、あまり仕事がないAV女優、実質休業状態であるAV女優などを合わせると、これくらいの数のAV女優が存在するのです。
このように、数千人単位で現役AV女優が存在し、稼働しています。
AVのリリースはどれくらいかと言うと、これまた明確なデータはないのですが、2009年時点では年間1万本以上がリリースされているとする説があります。
インターネットなどでも流通する作品もあれば、もっと小規模で流通している作品もあることから、実際の数は計ることができないのですが、それでもやはり1万本くらいは毎年リリースされていると考えてよいでしょう。
つまり、AV業界とは、数千人のAV女優を使って、毎年1万本以上のAVを製作し、販売しているということです。
市場規模はまだまだ大きいと言ってよいでしょう。
しかし、この数千人のAV女優に対し、みんながみんな出演の機会を与えられているかと言えば、決してそんなことはありません。
超人気の企画単体女優などになると、1年間に100本以上の作品に出演することもあります。
その反面、AV女優としての名前さえもろくに付けてもらえず、ナンパをテーマとした作品に素人役で出演するだけというようなAV女優もたくさんいます。
まったく仕事がないというAV女優もザラにいます。
そして、このうちの8割のAV女優は、1年以内にAV女優を引退しており、翌年にはまたそれと同じ数のAV女優が供給されています。
仕事の依頼がなく、仕方なしに辞めていくAV女優もたくさんいるのですが、大きな話題になった大型新人でも、AV業界が合わずに辞めていく例もあります。
AVだけで生計が成り立つAV女優は100人未満
AV女優のヒエラルキーは、単体・企画単体・企画の3種類に分けられます。
単体女優とは、そのAV女優ひとりの女優力だけで1本の作品を制作することができ、一定のファンが顧客としてついているAV女優のことです。
そのため、メーカーと専属契約を結んでおり、AV女優のなかでは最もランクが高いとされています。
企画単体女優は、単体女優並みの人気を誇っており、単独で1本の作品を制作する実力があるものの、メーカーとの専属契約は結んでいないAV女優のことです。
契約によって、出演するメーカーと本数を制限されていないため、様々なメーカーの作品に無制限に出演することができます。
企画女優とは、ほぼ無名のAV女優のことです。
つまり知名度がほとんどなく、特定のファンもついておらず、またクオリティも高くないため、そのAV女優を主役にしてAVを製作することができないAV女優のことです。
単独では売れないため、オムニバス形式のAVに数分間出演したり、乱交ものなどの複数のAV女優が出演する作品に登場することになります。
パッケージには名前が表示されないのが普通で、このような「名前のないAV女優」が、AV女優全体の8~9割を占めています。
現代のAV業界において、AVの仕事だけで生計を立てていけるAV女優は、単体女優と一部の企画単体女優だけです。
さらに、単体女優や企画単体女優でも、デビューして間もない頃は、出演作がヒットするかどうかはよくわかりませんから、他の仕事と掛け持ちでAV女優をやるケースがほとんどです。
売れて忙しくなるまでは、AVを副業と考えているAV女優も多いのです。
作品が見事ヒットし、メーカーからたくさんの出演依頼が来るようになり、副業としてのAV女優だけで十分に生計が立てられるようになった一部のAV女優だけが、AV女優を本業とすることが可能となります。
一説によると、そのようなAV女優は100人未満であるとする見方もあります。
企画単体女優として、専業で生計を立てていくためには、少なくとも自分が主役として出演するオファーが月に3本は必要でしょう。
それ以下でも、たちまち生活が困難になるとは限りませんが、入れ替わりの激しいAV業界において、月に3本くらい出演できる人気がなければ、たちまち生活は成り立たなくなってしまいます。
オファーが継続しなければ、半年~1年、場合によっては数か月でAV女優としての寿命は切れてしまいます。
かつては大人気であった単体女優が、専属契約が切れて企画単体女優として活動し、それでも人気のピークは過ぎていたため、わき役としてかろうじて活動を続けているようなケースもしばしばみられます。
このように、AV女優は激しい競争にさらされています。
AV女優の8割が1年以内に辞めていくと書きましたが、その多くは競争に敗れた結果です。
AV女優は転落した女ではない
AV女優は転落した女であるというイメージは、今も昔もなかなか変わらないものです。
例えば、父親にレイプされた経験を持つ女性であるとか、学校生活になじめずにドロップアウトした女性などがAV女優になる、つまり転落した結果AV女優になるというイメージが非常に多いのです。
もちろん、90年代まではそのようなAV女優が多かったのは事実です。
むしろ、そのような不幸な女性の魅力というものが、ユーザーの心を掴んでおり、人気も高かったと言えます。
しかし、このような不幸な女性は精神的に病んでいるケースが非常に多く、現場では「扱いにくいAV女優」でしかありませんでした。
基本的に、このような不幸な女性というものは、精神的に病んでいることから、対人関係や時間の管理が苦手であるという傾向があります。
撮影の集合時間になっても現場に来なかったり、ようやく来たかと思うと自分の気分ひとつで撮影を中断させたりするため、スタッフは困惑するといった有様です。
なにしろ、感情が不安定なのですから、それをスタッフが支えて、おだてたり、持ち上げたりすることによって、ようやく撮影が進んでいくのです。
では、現代のAV女優はどうなのでしょうか。
AVのなかには、今でも不幸な女性を描き出そうとした作品はありますし、AV女優の中にも不幸を背負った女性がいないわけではありません。
しかし、そのようなAV女優は明らかに少数派になっています。
現代のAV女優たちは、セックスを仕事と割り切って、きちんとこなしていきます。
AVに出演してセックスをすることが仕事であるというだけで、仕事内容こそ違いますが、一般企業のOLと何ら変わらない姿勢で真面目に仕事をこなしています。
そして、仕事が終われば一般女性の顔に戻って、AV関係者とはプライベートで付き合いません。
現代のメーカーは、心を病んだAV女優をキャスティングすることを嫌うようになってきています。
そうなると、プロダクションも心を病んだ女性を採用しません。
その結果、不幸な女性や心を病んだ女性はAV業界から淘汰されていき、いまやごく普通の女性がAV女優として働くようになったのです。
かつては、多くの人にとって、AV女優は自分より不幸だと思っていました。
むしろ、セックスを切り売りしているという事実を見て、自分より不幸であるべきだという思いがあったのです。
汚れた人間を嫌悪するのはいつに時代にもみられることですし、その嫌悪の対象として、AV女優は恰好の存在であったのです。
しかし、不幸な女性が淘汰され、華やかさ目立つようになった昨今では、AV女優に対する蔑みも徐々に少なくなってきています。
AV女優のセルフプロデュース
このように、目まぐるしく変化するなかで、AV女優はかつてのように、ただ可愛いだけ、ただ美人なだけでは人気が出なくなりました。
昔ならば、そもそもルックスの良いAV女優が少なかったのですから、とりあえずルックスがよければ、マグロ状態で撮影に臨んでも、それなりに人気が出たものです。
しかし、現代のAVでは、ただの飾り物では人気が出なくなり、徹底した実力主義になっています。
AV女優の実力とは、AV女優自身が作品に自己を没入させ、ファンを獲得していく能力であると言っても良いほどです。
1980年代、つまりAVの黎明期には、AVのパッケージ写真がそれなりに可愛ければ、売り上げを確保できていました。
いいかえれば、パッケージの出来栄えだけで売り上げが決まっていたのです。
そのため、撮影現場でもムービーの撮影にはそれほど力を入れず、それよりもむしろパッケージの写真にばかり力を入れていました。
撮影の日程が3日間あれば、そのうちの丸1日がパッケージ撮影に充てられていたほどです。
現在でも、パッケージによって売り上げが大きく変わるのは事実です。
しかし、同時に中身も評価されるようになってきています。
作品の中でセックスを演じる際には、AV女優みずからいやらしい魅力が出るように演技を行い、作品の価値を高め、自分の価値を高めていく必要があるのです。
つまり、AV女優という仕事にはセルフプロデュース能力が求められるようになってきており、それができないAV女優は、一度はパッケージ写真によって買ってもらえても、ユーザーは二度と買ってくれなくなります。
単体女優の場合には、特定のメーカーと本数契約を結びますが、1本目はそれなりによく売れても、2本目はどうしても売り上げが落ちてしまうものです。
1本目は珍しさもあって、ユーザーが積極的に手に取るからです。
2本目以降の売り上げの鈍化をできるだけ抑えるためには、1本目でどれだけファンを魅了するかが重要になってきます。
このことは、AV女優自身も良くわかっていることですから、撮影に臨んでは一生懸命に努力して、作品を作ろうとするAV女優が増えています。
メーカーにしても、AV女優を数字・売上だけで評価します。
デビュー作で売れ行きが悪いようなAV女優は、2本目からは製作費を削っていきます。
そして、売り上げの低下に歯止めがかからない場合には、契約した本数分の撮影を終えると、決して契約を更新することがありません。
メーカーからすれば、売れないAV女優の作品を制作しても仕方がありません。
もし、そのAV女優が今後売れる“かもしれない”という状況でも、できるだけそのAV女優の起用は避け、確実に売れるAV女優に投資したいと考えるものです。
だからこそ、人気の出なかったAV女優は淘汰されていくことになるのです。
AV女優のプロ意識
つまり、分かりやすく言えば、プロ意識を持たなければAV女優として務まらない時代になっているということです。
これは、演技によるセルフプロデュースもそうですし、セックススキルにしてもそうです。
最近のAV女優のセックスのスキルは、非常に高いレベルに達しています。
このことは、潮吹きをみれば一目瞭然です。
潮吹きは、一昔前には珍しいものでした。
潮吹きなどという現象は、日常生活におけるセックスではほとんど目にする機会がなく、AVでも珍しかったため、無色透明の液体が噴き出るのを見ると、びっくりする男性は非常に多かったのです。
しかし、2000年代に入ると、潮吹きを行なうAV女優が徐々に増えていき、今や潮吹きはAV女優の標準的なスキルの一つとなっています。
このきっかけを作ったあるAV女優などは、激しく潮を吹いて天井に達したり、カメラを壊したりすることがあったため、「潮吹きクイーン」などとも呼ばれていました。
そこから、だんだんと潮吹きができるAV女優が増えていきました。
今では、潮吹きがユーザーに人気の要素になることが分かっているため、自ら潮吹きを習得している女優が非常に多くなっています。
そのコツにも色々でしょうが、例えば撮影前にたくさんの水分を補給しておくなどしています。
なんでも、大量に潮を吹くと脱水症状に陥る危険性があるため、たくさんの水をのんでおくのだそうです。
また、自分のタイミングで潮吹きができるAV女優もいます。
あらかじめ監督と打ち合わせをしておき、潮吹きをしてほしいと伝えられたタイミングで潮を吹くのです。
また、カメラなどにかからないように潮を吹くというテクニックまで持っているAV女優もいます。
かつては不思議な現象であった潮吹きが、今やAV女優のスタンダードなテクニックになっています。
潮を吹く角度やタイミングまで操るAV女優までいますし、そこまではできずとも、とりあえず潮吹きができるというAV女優がほとんどです。
トップで活躍しているAV女優ならば、潮吹きができないAV女優はいないのではないでしょうか。
このことをみても、現代のAV女優がいかに仕事に対して真摯に取り組み、必要とされるスキルの習得に余念がないかということが良くわかります。
まとめ
AV女優を取り巻く環境は、一昔前と比べると、随分シビアなものになりました。
裸になれば稼げるという業界ではなくなっているのです。
しかしそれだけに、本気で取り組みたいと思っている女性にとって、やりがいが生まれる職場になってきていますし、真面目な働きがきちんと評価される職場にもなってきています。
テレビに登場しているAV女優たちは、このような環境で頑張るプロフェッショナルであると知ったならば、AV業界もっと素晴らしいものだと思えるかもしれません。