ドラマの撮影とは天と地の差!AVの撮影現場は戦場
AV制作のながれは以下の通りです。
まず、制作側は流通・販売を行うクライアントから製作費を受け取ります。
撮影や編集は自分たちで行うことが多いでしょうが、パッケージデザインなどまで自社でやるか外注にするかは制作会社次第です。
色々なことに経費がかかりますが、これら全てをクライアントの提示した予算の範囲内に収めなければなりません。
もちろん、監督に支払う監督料などの全ての経費がこのうちに含まれます。
AVは低予算になった
最近のAVでは、1本当たりにかけられる総予算は大体100~150万円程度です。
これは作品の内容によって変動し、女優の出演料は別にした金額です。
どのようなものが経費に含まれるのかと言えば、スチールカメラマン、ヘアメイクへの支払、パッケージデザイン料、スタジオ使用料、撮影当日の昼食などの雑費、女優の衣装代、男優の出演料、モザイク処理費用などすべてを含んでいます。
ちなみに女優のギャラは、クライアントから所属プロダクションに対して支払われます。
1日あたりの日当で支払になりますが、これは女優直接にではなくプロダクションに支払われ、プロダクションから女優に対して契約によって決められた割合が支払われます。
最近は100~150万円の製作費しかありませんが、昔はもっとお金が掛けられていました。
例えば20年くらい前ならば、単体女優を起用した作品などは女優の出演料は非常に高額で、パッケージデザイン料等はメーカーが負担し、製作費には250~300万円くらいが制作会社に支払われていました。
話題が集められそうなテーマや配役によって制作する場合には400万円ほどの製作費が投じられることもありました。
したがって、当時は数日間をかけて撮影するということができました。
しかし、今は当時の半分以下の製作費しか与えられないため、どうしても撮影を1日で終えなければ赤字になってしまいます。
実際、予算から制作コストを差し引くと、制作会社に監督料込で30~40万円程度が残るくらいのものです。
ちなみに、予算が減ったからと言って制作会社の収入が減ったと言うことはありません。
確かに1日で撮影しなければならないため忙しい現場になりますが、撮影や編集の技術が進歩したことによって経費削減につながったことで、当時と今でそれほど利益が変わらないのです。
今の倍以上の予算が払われていた当時は、編集は編集所で行っていましたが、今では編集や音調整はパソコンで自社で行うことができます。
撮影現場は大勢がばたばた動きながら行われているようなイメージがあるかもしれませんが、それも映画やドラマの撮影現場だけです。
AV撮影は予算の関係上最小限の人数で行われます。現場スタッフは、例えば監督1名、助監督2名、ムービーカメラマン1名、スチールカメラマン1名、ヘアメイク1名の計6名というようにです。場合によってはこれに音声1名、照明1名などがつけられることもあります。
戦場のような忙しさ
このように、AV撮影は予算の関係上、最低限の人員で1日で撮影し終えなければなりません。
スタジオの使用料が予算の中でも最もコストがかさむからです。
スタジオは1時間当たり数万円でレンタルすることになりますが、シナリオのあるAV撮影をする場合にはリビング、和室、ベッドルームなどがあるハウススタジオを使用することとなり、この場合には一層使用料が高くなります。
したがって、予定していた使用時間を超えると一気に赤字を生むこととなるため、「時までにスタジオを撤収する」と決めたならば、それまでに撮影を確実に終わらせなければなりません。
そのため、スタジオでのスケジュールは分刻みとなります。
たとえば朝集合するとすぐに女優はヘアメイクに取り掛かり、昼までにパッケージ写真の撮影などを全て終え、昼食はごく簡単なもので手早く済ませてムービー撮影に移り、全てのシーンを夜までに撮影し終えるというスケジュールです。
昼食や夕食は助監督が弁当を買いに行ったものを食べるのですが、女優もスタッフもお互いに手が空いた時に素早く食べる事になります。
ゆっくり座って食べる暇などはありません。
筆者は映画の端役で出演して現場を体験したことがありますが、これは大変な違いと言えるでしょう。
映画の現場などでは皆で一斉に休憩を取り、重要な役を演じる俳優からエキストラまで、皆で一緒に弁当を食べました。
休憩も1~2時間はありましたが、この背景にはやはり潤沢な資金の存在があります。
しかし、AVの撮影現場にはそんな余裕はありません。
セックスを演じる事は体力を使う重労働ですが、これを撮影中に何回もこなし、1回の絡みが1時間以上にわたることも珍しくありません。
このような重労働を、ろくに休憩も取らずに行うのです。昔の撮影現場では数日に分けて撮影することができたため、女優が疲れた時には1時間程度の小休止を設ける余裕もありましたが、今はおちおち食事も取れないほどの忙しさです。
それでも文句を言わずにエネルギッシュに仕事をこなすAV女優の根性は素晴らしいと言えます。
ある意味、このような忙しい環境にも順応できる強さのある女性がAV女優に向いているとも言えます。
ハメ撮りという撮影法
さらにいうならば、製作費が150万円ほども支給されるならばまだいい方で、より低予算の現場になると1本当たりの予算が50万円以下ということもあるといいます。
予算がこれだけ低い事を見ると、企画ものの撮影で企画女優を起用した作品であることが予想されますが、プロダクションに支払われるギャラも10万円程度でしょう。
そうなると女優たちの取り分は4万円くらいでしょうから、粗末な作品に出演する企画女優の労働環境の悪さは酷いものです。
このように製作費が低い作品はどのように撮影しているのかと言うと、スタジオを借りられる予算ではないため、ラブホテルを時間貸しで抑えて撮影します。
スタッフも監督兼男優兼カメラマンの一人で行います。
つまり、監督がハンディカムタイプの小型カメラ片手に、女優とのハメ撮りを行うのです。
企画女優は人妻や女子大生などの素人役で街を歩き、そこへ監督が声をかけて誘うというのがよくあるパターンです。
そしてラブホテルに連れ込み、簡単にインタビューなどを行い徐々にセックスに入っていくというドキュメント作品となります。
ちなみに、ハメ撮り作品にもよい作品は多いですが、やはりスタジオを借りて台本を元に撮影をしたAVのほうが、ストーリー性のある作品となるため、ハメ撮りは内容が簡素ということができるでしょう。
ちなみに、ハメ撮りという撮影法が誕生したのは1990年代の初めです。
女優と1泊2日に旅行をするというようなドキュメント作品が多く生み出されました。
当初はこのような作品もよく売れていましたが、最近では内容が薄いハメ撮り作品はユーザーから飽きられている傾向があり、売れ行きもあまり良くありません。
ただし、インターネットで配信される動画にはハメ撮りのものは多く、動画配信サイトの上位のものを検索すると、ハメ撮り作品がランクインすることが珍しくありません。
販売用AVの撮影としてはハメ撮りが減ってきているとみなすことができるでしょう。
以上のように、現在のAV撮影は、低予算で行われるため、撮影時間は限られており、そのなかでユーザーを満足させる中身の濃い作品を作らなければなりません。だからこそ撮影現場は非常に忙しくなっているのです。