現役AV監督へのインタビュー、製作費削減の現実とは?
今回は現役のAV監督にインタビューを行い、製作費削減の現状について詳しく聞いてみることにしました。
どんどん下がる製作費
AV女優の出演料が下がっていると言うのはよく聞く話ですが、もう一方で非常に苦境を強いられているのは監督やカメラマンなどの製作スタッフたちです。
メーカーはできるだけ女優の出演料を削らずに作品を作ろうとするため、そのしわ寄せは製作費の削減という形で現れます。
つまり、女優たちが出演料低下に悩んでいるよりも前に、製作スタッフはもっと頭を悩ませていると言うことです。
このことをくわしく見ていくと、現在のAV業界がいかに“冬の時代”であるかが分かります。
製作費は半分以下になった
―製作費はメーカーが出すんですよね?
「もちろん。
作品を流通させるクライアントが僕らに製作費を支払ったら、僕は割り振りをするの。
大体100~150万円くらい渡されるんだけど、これで撮影、編集、パッケージデザイン、僕の監督料、スタッフの人件費、全部がこの製作費に含まれてるから、少しでもここからはみ出たら僕の給料が少なくなるからね。
それは困るから全部経費内に収まるように計画をたてるんだよ」
―スタッフさんのお給料も製作費に含まれてるんですね。
てっきりどこか別のところから出てるのかと思ってました。
「スチールカメラマン、ヘアメイク、パッケージのデザイン料、スタジオ利用料、当日の飲食費、女優の衣装代、男優のギャラ・・・全部製作費にふくまれてるよ」
―ちなみに聞きにくいんですけど、監督さんのお給料ってかなり少なくなるんじゃないんですか?
「そうだね(笑)製作費から色々なコストを差し引いて、制作会社に残るお金は30万円くらいかな。
僕は自分のレーベル持ってるからそれが給料みたいなもんだけど、僕のポケットにそのままじゃなくてやっぱり制作会社に残るお金だから、あんまり多くはないよね」
―女優の出演料は含まれないんですか?
「うん。
女優のギャラはクライアントからプロダクションに支払われて、このうち何割かが女優に支払われるから。
プロダクションによってどれくらい渡してるかは極秘になってるから、実は僕も女優がどれくらいもらってて、それが出演料の何割くらいかって知らないんだよね。
キカタンなら30万円くらいだし、もっと高額のこともあるしね」
―それにしても製作費ってそんなに少ないんですね。
「今は本当にきびしくなったよ。
僕が監督デビューしたのはもう20年以上前になるんだけど、このときは良かった。
単体女優つかって作品撮るときなんかパッケージデザイン料もメーカーが負担してくれたし、製作費は300万円くらい出てたからね。
女優も1本で何百万って稼いでたし」
―昔はそれだけ製作費使ってたのに、今は半分くらいですよね。
どうやって対応してるんですか?
「色々工夫するところがあるからね。
例えば昔僕の出世作になったある作品なんかは製作費が400万円で撮影日程も3日間だったんだけど、今は同じ内容を1日に詰め込んで済ませるの。
あとはたくさんお金が出てた当時に比べて今はホントに技術があがったから。
例えば20年前だと撮影した素材を編集所で編集して音調整なんかもしなきゃいけなかったから、編集所にもお金を支払ったりしてたんだよ。
でも今はデジタルで撮影して、自分たちのパソコンで編集とか音調整できるからね。
挿入する音楽もフリー素材でネット上にいくらでも転がってるしさ。
それと人員削減ね。
撮影現場にスタッフたくさん読んだら赤字になっちゃうから、監督の僕1人、助監督2人、ムービーとスチールカメラマン1人ずつ、ヘアメイク6人って感じで、必要に応じて音声と証明を1人ずつ入れる感じかな。
最小限のスタッフで対応するようにしてるよ」
撮影現場はてんやわんや
―気になったのは、昔3日でやってたようなことを1日でやらなきゃいけないってことです。
相当忙しいですよね?
「そりゃもう、戦争みたいな忙しさだよ。
なにせ一番コストがかさむのはスタジオの使用料だからね。
スタジオにも色々あって、ドラマもので家庭感が必要になるような場合だったなら、キッチン、リビング、ベッドルームなんかがそろったハウススタジオが必要になる。
そうなると1時間に何万円ってかかることもあるわけ。
予算はぎりぎりで組んでるから、スタジオを撤収しなきゃいけない時間に撮影が終わらなくて使用時間が伸びると、それだけで一気に赤字になるからね。
どうしてもその時間までに済ませなきゃならないの。
だから僕が撮影する時のスケジュールなんか分刻みだよ。
朝早く集合して現場入りしたら女優にはすぐヘアメイクに取りかかってもらって、昼までパッケージ撮影をして、昼食をパパッと済ませたらVTRの撮影。
これを9時間くらいで確実に済ませて22時には撤収っていうパターンが多いね。
ホント満足にご飯だって食べられないんだから。
夕食は助監督に買いに行かせるんだけど、それをテーブルに並べといてスタッフも女優も手が空いた時にさっと食べる。
ゆっくり座って食べるなんて言うことはできないね」
―想像以上に大変そうで・・・
「ホントに大変なのは女優だよ。
スタッフも大変だけど、女優はもっと大変なんじゃないかな。
絡み自体体力をかなり消耗するのにこれを時間内に何回もやるんだ。
シーンによっては1回の絡みが1時間以上になることもあるし。
さっき話したみたいに3日くらいかけて撮影できるなら時間にたっぷり余裕があるから、女優が疲れたら1時間くらい休憩とってもよかったんだけど、今はシーンの変わりめにもメイク直し、シャワー、着替えなんかを20分くらいでやらなきゃいけないから休む暇なんかないね」
製作費の今後
―これ以上に下がっていくんですかね?
「どうだろうね。
十分に考えられるけど、今やってる内容を半日で済ませることは不可能だし、技術力で補うのにも限界があるから、これ以上下がったらAVの質はかなり落ちるだろうね。
実際に製作費が50万円以下っていうこともあるんだよ。
でもそうなるとスタジオは使えないしスタッフも使えない。
ラブホテルを数時間借りてスタジオ代わりにして、監督がカメラマンと男優を兼任するようになる。
つまりハメ撮りってやつね。監督がハンディカムタイプの小型カメラを持って撮影するんだよ。
ハメ撮りは企画ものとかでは今もあるんだけど、もうハメ撮りが売れる時代は終わったからね。
だから製作費がこれ以上下がって、ハメ撮り以外できないような状態になったら、AV業界は終わっちゃうかもしれないね」